判例2

事件名

「認証方法および装置」事件

事件番号

知財高裁平成18年(行ケ)第10203号

原告

株式会社ジェネス

被告

株式会社デンソーウェーブ

事件概要

「認証方法および装置」(特許第3207192号)の発明に係る特許権者(原告)が、無効審判において進歩性がないことを理由として無効とする旨の審決がなされたため、その取消を求めた。

特許権の内容

【請求項1】(請求項2以降は省略)

@携帯電話に表示されるバーコードを使用した認証方法であって,

A認証装置が,認証要求者の顧客である被認証者の発信者番号を含むバーコード要求信号を被認証者の携帯電話から通信回線を通じて受信するステップと,

B前記認証装置が,前記被認証者の顧客データが顧客データベースに記録されているか否かを判定するステップと,

C前記認証装置が,前記被認証者の顧客データが前記顧客データベースに記録されていたときに,前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップと,

D前記認証装置が,該バーコードを前記被認証者の発信者番号の携帯電話に通信回線を通じて送信すると共に,該バーコードをバーコードデータベースに記憶させるステップと,

E前記認証装置が,被認証者によって携帯電話に表示されて提示され,且つ認証を求める認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られて認証を求める認証要求者から通信回線を通じて送信されてきたバーコードを受信するステップと,

F前記認証装置が,該受信したバーコードが,前記バーコードデータベースに記録されているバーコードと一致するか否かを判定するステップと,

G前記認証装置が,受信したバーコードが前記バーコードデータベースに記憶されていたときに,当該バーコードを携帯電話により提示した被認証者を認証する旨の信号を前記認証要求者に通信回線を通じて送信するステップと,を備えている認証方法。

引用文献

甲第1号証 特開平10−69553号公報

甲第2号証 「日経ビジネス」2000年(平成12年)4月24日号所収の「特集『ケータイ』日本の世紀(28〜40頁)と題する記事」

甲第3号証 特開2000−10927号公報

甲第4号証 特開平10−13695号公報

本発明と甲3号証の相違点

(A)甲3号証の認証用コードが「一時的なパスワード」であるのに対し、本発明は「バーコード」

(B)甲3号証の認証用コードである「一時的なパスワード」がユーザIDとともに利用者PCから入力されて、リモート接続装置により受け取られるのに対し、本発明は認証用コードであるバーコードが利用者の携帯電話に表示され、それを認証要求者(店舗)のバーコード読取装置で読み取られている。

原告の主張

(A)について

・甲第4号証には識別手段として文字・記号・又はバーコードのようなコード形式のものが示されており、認証用コードとしてどのようなものを使用するかは適宜決定すべきもの

・甲2号証には、携帯電話を認証に用いる場合、認証用コードとしてバーコードを表示するものが示されているから、認証用コードとしてバーコードを用いることは容易。

(B)について

・甲1号証には「入力すべき情報の表示形態、情報の保持手段に応じて適宜な入力装置を用いることは当然なされるべきこと」と記載

・甲3号証では認証コードの読取装置が、リモート認証側に属するか認証要求者側に属するかは構築するサービスの形態によって自ずと決まる程度のこと

被告の主張

・バーコードは視覚的に読み取ることが不可能なため、セキュリティレベルが高い。

・甲第3号証の「一時的なパスワード」は被認証者が被認証者のPCを利用して入力するものであるため、「一時的なパスワード」を視覚的に読み取ることが不可能なバーコードに置き換えたとしても、その読取が被認証者側で行われる以上、セキュリティレベルは変わらずメリットがないから、バーコードを用いる必要性がない。

・甲第3号証にバーコードを用いる場合、被認証者のPCに、あえてバーコード読取装置を備えなければならず、付加的な費用が発生してしまう。

・認証情報の入力が、本発明のように認証要求者側でなされるか、甲第3号証のように被認証者側でなされるかは、システムのセキュリティレベルに多大な影響を及ぼす事柄であり、甲第3号証は本発明のような状況を想定したものでない。

裁判所の判断

・特定の認証用コードが周知又は公知であるとしても、それを適用することが容易であるかどうかについては、利用目的、利用時の利点・欠点、利用する際の状況等を考慮すべき。

・甲第3号証の場合、認証用コードがバーコードのように視覚的に読み取り不可能であることは特段の必要がない。

・甲第3号証では、バーコードを用いたのでは読取装置も必要となり、汎用性がないという欠点を補填できていない。

以上の点から、本発明は甲各号証記載の発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえないとして、審決を取り消した。

論評

本件は、甲第3号証に甲第1,2,4号証を組み合わせることが容易ではないとして、本発明を想到することはできないと結論づけている。

実務上、周知技術との組み合わせとして拒絶されることはよくあるが、この判例はそれとは逆の判断がなされている点で、実務上利用できる可能性がある興味深い判例である。