判例5
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事件名 |
「インターネットを利用した身体関連商品の購入システム」事件 |
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事件番号 |
東京高裁平成15年(行ケ)第325号 |
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原告 |
X |
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被告 |
特許庁長官 |
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事件概要 |
「インターネットを利用した身体関連商品の購入システム」(以下、本発明)の拒絶査定に対する審判請求(不服2002−6207)で、審判請求は成り立たないとの審決があったため、審決の取消を求めた。 |
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特許権の内容 |
【請求項1】(請求項2以降は省略) 商品購入者の全身のサイズデータ及び頭,手,足等の身体各部のサイズデータに基づく全身,身体の一部を三次元的,二次元的,断面図的及び又は写真的に画像入力を行い,該全身を露出した状態,身体の一部を露出した状態,肌着をつけた状態,被服を着た状態の三次元画像,断面画像及び又は身体の平面的画像,写真画像を適宜選択して画面上に写し出し,身体関連商品の販売者側から提供された商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上を適宜選択して前記商品購入者の全身,身体の一部を露出した状態,肌着をつけた状態及び又は被服を着た状態を適宜選択して画面上で商品が自分の体形で着用できるか否かを商品に基づく商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上と自己の身体のサイズデータをコンピュータにて演算,比較による判断及び又は身体に装着する帽子,かつら,めがね,ベルト,手袋,靴,ネクタイ,ネックレス等の身廻り品,装飾品,履物等の商品に基づく商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上と自己の身体のサイズデータをコンピュータにて演算,比較による判断をし,商品購入者がコーディネーターデータファイルからデータ取出して好みの商品をコーディネートし,かつズボンの丈を短くあるいは長くとか,上着の袖を短くとか,長くとか商品サイズの変更が出来るか否かをEメールで問い合わせをし,併せて商品サイズの変更に要する費用の有無を聞いて商品購入者の体形に合い,好みのデザインの商品をインターネット上で購入することを特徴とするインターネットを利用した身体関連商品の購入システム。 |
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主な争点 |
請求の範囲の記載が不明確(特許法36条6項2号)か否か |
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原告主張要部 |
一、コンピュータにおける演算処理に関する記載について A「商品コード」とは,ある特定の商品を他の商品と区別するためにその特定の商品に付されたコード番号であり,同種の商品でもサイズ,素材,柄等が異なる場合でも識別できるように個々の商品にコードが付される。したがって,同種商品でもサイズ,素材,柄等が異なればコード番号が異なる。「商品コード」には,商品を特定するために,サイズ,柄,素材等の色々な要素が盛り込まれているものであり,サイズ同士の比較も可能である。 C「コーディネーターデータファイル」は,専門家である「コーディネーター」が衣服,めがね,靴,かつら等を身につけたときにトータルのファッション等を判断するファイルがファイル装置に格納されているもので,コンピュータで比較判断するときに随時出力するものであり,商品購入者はコーディネーターの意見を参考にして商品を選ぶことができる。被告の主張は誤りである。 D本願発明は,「方法の発明」に属するものであり,「システム」という用語を使用したからといって直ちに「物」の発明と形式上考えるのではなく,あくまでも請求項に記載された発明の実体に則した判断がされるべきである。本願発明は,「方法の発明」であるから,請求項の記載に不備はない。 |
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被告主張要部 |
一、コンピュータにおける演算処理に関する記載について A「商品に基づく商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上と自己の身体のサイズデータをコンピュータにて演算,比較による判断」なる記載の意味内容(この記載により特定される事項に含まれる具体的事物の範囲)が不明確である。すなわち,「商品コード」と「自己の身体のサイズデータ」とは一般に次元(単位)を異にするデータと考えられるのであって,これらがどのようにコンピュータにて演算,比較による判断がされるのかは,当業者といえども理解できない。 C「商品購入者がコーディネーターデータファイルからデータ取出して好みの商品をコーディネートし」なる記載は,「商品購入者」のなすべき行為であり,人のなすべき行為が,本願発明の対象物たる「購入システム」の構成ないし機能とどのような関係を有するのかも不明確である。 D本願発明は,特許法2条でいう「物の発明」に属する(「システム」の発明が「物」の発明として扱われるべきことは,平成5年に特許庁が公表した審査基準で明確化されて以来,特許出願に携わる者の間では常識である。)。したがって,どのような物が本願発明の範囲に含まれ,どのような物がその範囲から外れるのかを当業者が理解可能なように特許請求の範囲の記載がされている必要があるところ,本願特許請求の範囲の記載はそのようには記載されていないものである。すなわち,本願特許請求の範囲には,以上のほか,「適宜選択」,「問合せをし」,「費用の有無を聞いて」,「購入する」などの人のなすべき行為と考えられる事項が発明特定事項として含まれており,その人のなすべき行為と,「物」としての「購入システム」との関係が不明確であり,そのため,どのような物が本願発明の範囲に含まれ,どのような物がその範囲から外れるのかが不明確になっている。 |
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裁判所の判断 要部 |
本願発明については,コンピュータによる演算,比較の処理に商品コードが用いられるところ,その処理が不明であり,また,好みの商品をコーディネートするために用いられるコーディネーターデータファイルの構成が明確でないというほかない。これらの事項は,本願発明において,商品が自分の体形で着用できるかどうか判断し,好みの商品をコーディネートする際に用いられるものであるから,結局のところ,本願発明を明確に把握することができないというべきである(本願発明が方法の発明であるとは解し得ないことは前判示のとおりであるが,本願発明が方法の発明であると仮定しても,上記事項は本願発明を把握する上で必要な事項であるから,いずれにしても,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないというべきである。)。 |
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論評 |
請求項に記載されたコンピュータ処理やファイルの内容が不明確と判断された事例であり、特に、発明の要旨に関わる部分の記載が不明確であったことから拒絶審決が維持された。また、ソフトウェア関連発明について、方法の発明として記載するか物の発明として記載するかによって明確性の判断が分かれる可能性があることを示した事例である。 |