判例6
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事件名 |
「写真測量サービスシステム」事件 |
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事件番号 |
知財高等裁判所平成18年(行ケ)第10502号 |
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原告 |
X |
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被告 |
特許庁長官 |
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事件概要 |
「写真測量サービスシステム」(以下、本発明)の拒絶査定に対する審判請求(不服2003−24656)で、審判請求は成り立たないとの審決があったため、審決取消訴訟を求めた。 |
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特許権の内容 |
【請求項1】(請求項2以降は省略) 顧客端末(8)と写真測量サービス業者の解析用コンピュータとが通信回線網により接続され,写真測量サービス業者の解析用コンピュータは,複数の測点(2−1,2−2,・・・2−n)を有する測量対象(4)を複数の地点から非測定用の市販のデジタル・カメラ(6)で焦点固定にて,顧客自身が撮影して得た複数枚の画像情報及び前記画像情報の中で長さが既知の被写体から得られた長さの情報とを,前記撮影した顧客の顧客端末(8)から通信回線網(10)を介して受信する画像情報受信手段(12)と,前記受信した複数枚の画像情報及び前記長さ情報から,カメラのレンズの歪みを補正して,各隣接する撮影地点から撮影した画像間において双方の画像内に存在する各測点の視差の違いから各測点の3次元座標値を示す数値情報,及び隣接する各測点の3次元座標値で構成される面の方向を示す情報とを演算処理により算出する解析処理手段(14)と,算出された前記3次元座標値を示す数値情報,及び前記面の方向を示す情報から図化処理を行う図化処理手段(18)と,図化された図化情報を,前記撮影した顧客の顧客端末(8)に通信回線網(10)を介して送信する解析結果送信手段(16)と,を有する,ことを特徴とする写真測量サービスシステム。 |
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引用文献 |
引用例1 平成9年4月10日に頒布された刊行物である「解析写真測量 改訂版」(発行責任者:(社)日本写真測量学会・解析写真測量委員会,発行所:(社)日本写真測量学会。) |
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本発明と文献1の相違点 |
(A)本発明は、「測点」の記載があるのに対して,引用例1記載の発明は,「基準点」の記載はあるものの「測点」の記載がない。 |
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原告主張要点 |
審決は,引用発明の「一枚の写真の中に写された3点以上の基準点」が本願発明の「複数の測点」に相当するとした上,本願発明と引用発明の一致点を「複数の測点を有する測量対象を・・・特徴とする写真測量システム。」と認定したが,以下のとおり,審決のこの認定は誤りである。 (1)引用発明が,解析写真測量を行うための抽象的な概念又は手法そのものを示したものであるのに対し,本願発明は,かかる抽象的な概念又は手法を進化,発展させ,実際の現場で「測定対象の変位量の測定」や「変状する法面の挙動監視」等を継続的に行う「システム」として使用することができるように開発されたものである。 したがって,引用発明の「基準点」が,計測上の抽象的概念であるのに対し,本願発明の「測点」は,計測上の抽象的概念である基準点を具体化したもの,すなわち,その構成に工夫を凝らして製作した上,工夫を凝らして現場に設置した具体的な「設置物(治具)」である(なお,本願発明の「測点」は,写真画像上においてよく認識することができるように,あるいは,自動的に認識することができるようにしたものである。)。 (2)また,引用発明の「基準点」が,決して動かない,又は動いては意味をなさない基準となる「点」であるのに対し,本願発明の「測点」は,その後の地盤の動き等を計測する「測点」であり,その動きが知りたいものであって,動くことを前提として設けているものである。 (3)被告は,本願発明と引用発明が,測定原理を共通にするものである旨主張する。確かに,本願発明は,引用発明の基本的手法や基本原則を利用するものであり,本願発明においても「基準点」は必要であるが,本願発明における「測点」は「基準点」ではなく,計測しなければならない「点」である。すなわち,本願発明においては,「基準点」の地上座標をあらかじめ明確にした上で,複数の「測点」を現場に設置し,当該「測点」の3次元座標を算定,計測していくものである(したがって,「測点」の地上座標は,あらかじめ計測しておく必要はなく,大まかな初期値をコンピュータ端末に入力すれば,繰り返し計算を行うことにより,正しい値が得られるものである。)。にもかかわらず,審決は,本願発明における上記「基準点」と「測点」とを混同している。 (4)以上のとおり,引用発明の「基準点」と本願発明の「測点」とは,その構成を異にするものであるから,本願発明と引用発明の一致点に係る審決の上記認定は,誤りである。 |
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被告主張要点 |
本願発明と引用発明との一致点 本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「一枚の写真の中に写された3点以上の基準点」は,共線条件を設定するために測量対象に設けられた撮影対象点であるから,本願発明の「複数の測点」に相当する。 ・・・ 以上より,本願発明と引用発明とは, 「複数の測点を有する測量対象を複数の地点から非測定用のカメラで撮影して得た複数枚の画像情報から,カメラのレンズの歪みを補正して,各隣接する撮影地点から撮影した画像間において双方の画像内に存在する各測点の視差の違いから各測点の3次元座標値を示す数値情報を演算処理により算出する解析処理手段を有することを特徴とする写真測量システム。」 という点で一致する。 |
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裁判所の判断要部 |
原告の主張(3)について ア 原告は,本願発明の「測点」は「基準点」(3次元座標値(地上座標値)をあらかじめ明確にした「点」)ではなく,これから計測しなければならない「点」であるにもかかわらず,審決は「基準点」と「測点」とを混同している旨主張する。 イ そこで検討するに,上記(1)のとおり,引用発明の「基準点」は,既にその3次元座標値(地上座標値)が測定されている「点」であるところ,本願発明の「測点」は,顧客が測量対象を的確に把握するために必要と考える測量対象内の点であり,演算処理により「3次元座標値を示す数値情報」が算出されるべき「点」であるから,その内容に照らし,測点が基準点を兼ねる場合を除き,3次元座標値がいまだ算出されていないものであることは明らかである。 そうすると,3次元座標値が既に知られているか否かという観点からは,引用発明の「基準点」は既知の「点」であり,本願発明の「測点」は未知の「点」であるといえ,したがって,両者は,技術的意義を異にするものというほかない。 してみると,審決は,本願発明の「(複数の)測点」の技術的意義の把握を誤り,これが引用発明の「基準点」,すなわち,「共線条件を設定するために測量対象に設けられた撮影対象点」と即断したものといわざるを得ない。その結果,原告が主張するとおり,引用発明の「基準点」と本願発明の「測点」とを混同し,これを一致点と誤認したものといわざるを得ない。 なお,本願明細書に「基準点は顧客が特定の測点を指定すること等により決定される。」との記載(段落【0029】)があることが,上記判断を何ら左右するものでないことは既に説示したとおりである。 ウ そうすると,本願発明と引用発明の一致点を「複数の測点を有する測量対象を・・・特徴とする写真測量システム。」と認定した審決の一致点の認定が誤りであることは明らかである。 |
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論評 |
引用発明の認定の誤りにより審決が取り消された事例であり、判決は審決が本願発明と引用発明の一致点と認定した構成につき、技術的意義が異なるために一致点といえないと判断した。 拒絶審決が取り消された数少ない事例として、今後の類似のソフトウェア関連の判断において一つの参考になる事例といえる。 |