判例1

事件名

「一太郎」事件

事件番号

第一審:東京地裁平成16年(ワ)第16732号

第二審:知財高裁平成17年(ネ)第10040号

原告

松下電器産業株式会社

被告

株式会社ジャストシステム

事件概要

被告は、ワープロソフト「一太郎」、グラフィックソフト「花子」(以下、被告製品という)を製造販売していた。

原告は、被告製品が原告が所有する特許権を侵害するとして、被告製品の製造販売の差止めを請求した。

特許権の内容

【請求項1】アイコンの機能説明を表示させる機能を実行させる第1のアイコン、および所定の情報処理機能を実行させるための第2のアイコンを表示画面に表示させる表示手段と、前記表示手段の表示画面上に表示されたアイコンを指定する指定手段と、前記指定手段による、第1のアイコンの指定に引き続く第2のアイコンの指定に応じて、前記表示手段の表示画面上に前記第2のアイコンの機能説明を表示させる制御手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】前記制御手段は、前記指定手段による第2のアイコンの指定が、第1のアイコンの指定の直後でない場合は、前記第2のアイコンの所定の情報処理機能を実行させることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】データを入力する入力装置と、データを表示する表示装置とを備える装置を制御する情報処理方法であって、機能説明を表示させる機能を実行させる第1のアイコン、および所定の情報処理機能を実行させるための第2のアイコンを表示画面に表示させ、第1のアイコンの指定に引き続く第2のアイコンの指定に応じて、表示画面上に前記第2のアイコンの機能説明を表示させることを特徴とする情報処理方法。

被告製品

被告製品(一太郎)は以下の機能を有している。

@「ヘルプモード」ボタン(?とマウスの絵からなる)をマウスカーソルで指定する。

A「ヘルプモード」ボタンをクリックすると、マウスカーソルに「?」マークが出現する。

B機能を調べたいボタン(「印刷ボタン」等)にカーソルを移動させてクリックすると、その機能の説明が表示される。

主要な争点

被告製品をインストールしたパソコンに表示される「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンが、本件発明の「アイコン」に相当するか。

原告の主張

本件発明にいう「アイコン」とは、「表示画面上に、各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示したもの」であるから、被告製品をインストールしたパソコンに表示される「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは、本件発明の「アイコン」に相当する。

被告の主張

本件発明にいう「アイコン」とは、「「ドラッグ」ないし「移動」ができる「デスクトップ上」に配置される、各種データや処理機能を絵又は絵文字として表示して、コマンドを処理するもの」である。

被告製品をインストールしたパソコンに表示される「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは、ドラッグや移動が不可能である上に、デスクトップ上に配置されるものではないから、「アイコン」に該当しない。

地裁の判断

本件発明にいう「アイコン」とは、「表示画面上に、各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示してコマンドを処理するもの」であり、本件明細書の記載においても、本件特許出願時の当業者の認識においても、それ以上に、ドラッグないし移動可能であるものとか、デスクトップ上に配置可能なものであるなどといった限定を付す根拠はない。

従って、被告製品の「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは、本件発明の「アイコン」に相当する。

高裁の判断

地裁の判断を支持

論評

本件訴訟において争点の一つとなったのは、@被告製品の「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンが、本件発明の「アイコン」に相当するか。という点であり、裁判所は第一審、第二審ともに「相当する」と判断した。

一方、同じ当事者間の別裁判(「ジャストホーム2事件」)においても「アイコン」の相当性が争点となったが、「相当しない」と判断された。

2つの裁判の判断の違いから、ソフトウェア関連発明における「アイコン」相当性の判断基準の一つを読み取ることができる。

被告製品の家計簿ソフトウェア「ジャストホーム2」のヘルプボタン「?」について、裁判所は「アイコン」には該当しないと判断した。

つまり、裁判所は、「ジャストホーム2」の「?」を「アイコン」でないと判断したが、「一太郎」の「?+マウスの絵」は「アイコン」であると判断したのであり、「絵」の有無により判断が分かれたと言える。

このことから、「アイコン」を構成要件とするソフトウェア関連発明の特許権においては、ヘルプボタン等のボタンデザインが「絵」を含んでいるか否かが侵害成否の分かれ目となる可能性がある。