判例3

事件名

「メッセージ管理装置及び方法」事件

事件番号

東京高裁平成15年(行ケ)第300号

原告

被告

特許庁長官

事件概要

「メッセージ管理装置及び方法」に係る特許出願の拒絶査定不服審判で、審判請求は成り立たないとの審決があったため、請求人が審決の取消を求めた。

特許権の内容

【請求項1】(請求項2以降は省略)

@ユーザ装置により入力された,メッセージを表す,1又は複数の記号からなるメッセージ識別子を,ネットワークを介して受信する手段と,

A上記メッセージ識別子の受信に応答して,上記メッセージ識別子に対応するメッセージを出力する手段と,

B出力した上記メッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給する手段とを有することを特徴とするメッセージ管理装置。

引用文献

文献1「訪問介護にiモード*ヘルパーのサービス管理*ジャパンケア」,北海道新聞朝刊全道,北海道新聞社,2000年4月11日,13頁

(内容)

(a)「介護保険制度による訪問介護を行っているヘルパーに,NTTドコモグループのインターネット接続サービス「iモード」対応の携帯電話を持たせ,訪問時間や介護サービスの内容などの記録を本社で一括管理するシステムを導入した。」

(b)「携帯電話を持つのは,同社が道内,東北,関東の約百二十カ所に置いているヘルパーステーションから出勤するヘルパー。訪問先に到着した際,数字化された利用者の氏名のほか,「三十分間の身体介護」なら「111111」というように全国統一のコード番号でサービス項目など入力する。(構成@に相当)

(c)「ヘルパーの携帯電話からインターネット経由で送られた情報は,本社のサーバーと呼ばれるコンピュータに毎日蓄積される。これによって,毎月の介護報酬の請求やスタッフの賃金計算などを電子処理できるため「サービス内容や売り上げを即時に把握できる。」という。」

本発明と文献1の相違点

(A)本発明は、メッセージ識別子の受信に応答して,該メッセージ識別子に対応するメッセージを出力する手段と,出力した該メッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給する手段を有して,受信したメッセージ識別子に対応するメッセージを把握可能としているのに対して,文献1記載の発明は,コード番号の受信に基づいて,対応する介護サービス内容を把握可能とする手段を有するものの,その手段が機能を実現するための詳細な構成については特に記載がない。

原告の主張

・審決が周知例として引用した特開昭61−156470号公報,特開平10−208150号公報は,POSシステムに関するものであり,メッセージ管理技術とは関係がない。

・文献1に記載された発明の効果は,毎月の介護報酬請求や賃金計算などを電子処理できるため「サービス内容や売り上げを即時に把握できる」というものである。要するに,訪問介護サービスの業務管理を電子化により容易に行なえるというものである。これに対し,特開昭61−156470号公報,特開平10−208150号公報のPOSシステムでは,POS端末はサーバー装置のテーブル(表)を参照するものであり,価格や商品名等の変更をPLU(price look up)に反映させるだけでよく,個々のPOS端末に対する変更作業が不要であるという効果がある。このように,引用例のサーバーの構成・作用効果と特開昭61−156470号公報,特開平10−208150号公報のPOSシステムの構成・作用効果とは基本的な構成が異なり,組合せることに合理的な動機付けは存在しない。

被告の主張

・メッセージ管理装置が,受信したメッセージ識別子に対応するメッセージを出力する手段を有しているが,例えばPOSシステムのように,1又は複数のユーザ装置がネットワークを介してホスト装置に接続されたシステムにおいて,ホスト装置がユーザ装置から入力された特定情報を表す識別子の受信に応答して,内部の変換テーブルを用いて該識別子に対応する特定情報の内容を変換出力し,変換出力した該特定情報の内容をネットワークを介してユーザ装置に供給して把握可能とすることは周知の技術手段である(必要とあれば,特開昭61−156470号公報,特開平10−208150号公報を参照のこと)。そして,この周知の技術手段を文献1記載の発明のコード番号の受信に基づいて,対応する介護サービス内容を把握可能とする手段として採用し,本発明のようにすることは当業者が容易になし得たものであるから,上記相違点を格別のものとは認めることはできない。

裁判所の判断

・特開昭61−156470号公報,特開平10−208150号公報に記載の発明はPOSシステムに関するものではあるが、変換テーブル自体はデータ処理一般に用いられるものであり、1又は複数のユーザ装置がネットワークを介してホスト装置に接続されたシステムがPOSシステムに限られるものでないことは、明らかである。

従って、原告主張の取消事由は理由がない。

論評

「システムの構成要素として通常用いられる周知慣用手段を付加したり、一部を均等な手段に置き換えたりすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる」という進歩性の基本的な考え方が適用された判例。実務上もよくなされる拒絶理由である。